「サー?スパーホークの忠告に従ってるだけですよ、レディ。背後に生きた敵を残すな――とくに弓で武装してる敵はね。背中に矢を射かけられるのはごめんだし、それ腦部發展はあなただって同じでしょう」
 岩場の手前で森の中に入り、一行は用心深く進みつづけた。テルの部下が一人、そっと木々のあいだに姿を消して、しばらくすると戻ってきた。
「二人です。岩場を五十|歩《ペース》ほど行ったところにいます」
「二、三人連れていけ。二百|歩《ペース》ほど行くと身を隠す場所がある。そこなら道を横切れるから、岩場の裏から回って背後を襲え。声を立てさせないようにしろ」
 むっつりした顔のブロンドの殺し屋がものすごい笑みを浮かべ、二人の仲間に合図すると馬を駆っていった。
「こんなに楽しいものだってことを忘れてたよ」テルが言った。「天気がいいときだけだがな。冬はみじめなもんなんだ」
 岩場を過ぎて半マイルほど進んだあたりで、三人の殺し屋が追いついてきた。
「首尾は」テルが尋ねる。
「半分眠ってましたよ」一人が小さく笑って答えた。「今じゃすっかり眠ってますがね」
「よし」テルはあたりを見まわした。「しばらく疾駆《ギャロップ》で行けるぞ、スパーホーク。ここから数マイルは開けた平原を通るから、待ち伏せのできるような場所はない」
 一行は正午近くまで疾駆《ギャロップ》で進み、丘の手前にかかったあたりでテルが停止の合図をした。
「次は少々厄介だ。道は下腦部發展りになって、その先は渓谷だ。しかもこっち側からだと、迂回する方法もない。ドーガのお気に入りの場所だから、かなりの手勢を集めてるはずだ。いちばんいいのは一気に駆け抜けてしまうことだろう。動いてる標的を上から弓で狙うのはかなり難しい――少なくともおれはそうだ」
「渓谷はどのくらい続いてる」
「一マイルほどだ」
「そのあいだずっと丸見えなのか」
「まあそうだな」
「だがほかに手はない、と」
「暗くなるまで待つという手がないわけじゃないが、そうなるとヘイドまでの残りの行程は危険が倍になるな」
「わかった」スパーホークは心を決めた。「道を知ってるのはきみだ。先導してくれ」鞍から盾をはずして腕に装着する。「セフレーニア、わたしのすぐ横に並んでください。あなたとフルートを盾で守ります。よし、いいぞ、テル」
 一気に渓谷へなだれ込むことで、スパーホークたちは敵の不意を衝いた。崖の上から驚きの声が上がり、矢が一本、はるか後方に飛来した。
「散開しろ! 固まるんじゃない!」テルが叫んだ。
 なおも駆けつづけると、に降り注ぎはじめた。セフレーニアとフルートを守っているスパーホークの盾に、矢が当たって音を立てる。くぐもった叫びが聞こえて、騎士は背後に目をやった。テルの部下の一人が苦痛に顔を歪《ゆが》め、鞍の上でぐらついて腦部發展いる。身体から力が抜けて、男は地面に投げ出された。
「止まるな! もうすぐだ!」テルの声がした。
 前方に渓谷からの出口が見えた。道はその先で木立の中を通り、切り立った断崖の中腹へとカーブしながら続いていた。
 さらに何本か矢が射かけられたが、もう隊列までは届かないようだった。
 木立の中を駆け抜け、崖の中腹にかかる。テルが叫んだ。
「このままだ! ずっと駆けつづけるつもりだと思わせるんだ」
 疾駆《ギャロップ》のまま断崖の切り通しを駆けていくと、道が鋭く切れこんで崖が終わり、急な坂道の下に森が見えてきた。テルは息をきらした馬の手綱を引いた。
「このあたりでいいだろう。手前で道が狭くなっているから、一度に数人しか通れないはずだ」
「本当に追ってくるかな」とクリク。